収益化は、最後に料金画面を足す作業ではありません。広告なら外へ出るデータ、サブスクなら毎月説明できる価値、買い切りなら将来の保守費用が先に決まります。利用者が受け取る価値の続き方と、運営に発生する費用の続き方を合わせて選ぶことになります。私が出しているアプリはすべて無料+サブスクの形にしました。なぜ買い切りと広告を選ばなかったか、無料の範囲をどこで切っているかを書きます。公開したあとに見ている段階も並べます。購入率を見る前に、有料の画面まで人が届いているかを確かめる順番です。
モデルは五つ。費用が続くかどうかで分かれる
選ぶときに見ているのは、機能の多さではありません。利用者が受け取る価値が一度で終わるか、使っている間ずっと続くかです。そして、運営側の費用も同じ形で続くかどうか。
この二つが揃っているモデルは運営が安定します。ずれているモデルは、どこかで払えなくなります。買い切りにしたのに毎月サーバー代がかかる形が、いちばん典型的なずれです。
下の表の五つのうち、一人で始めるときに外れやすいのは法人向けです。金額が大きく見えるぶん、時間の見積もりが抜けます。問い合わせに返す、導入の手伝いをする、契約の書類を用意する。どれも開発の時間から引かれます。
| モデル | 向いている形 | 先に決まること |
|---|---|---|
| 広告 | 利用頻度が高く、表示の機会が多い | 外へ出るデータと、体験への割り込み |
| 買い切り | 価値が購入の時点で完結する | その後の保守を何で払うか |
| 消耗型課金 | 回数やアイテムを使い切る | 残高の扱い、復元、説明の書き方 |
| サブスク | 価値と費用が使っている間続く | 毎月説明できる価値があるか |
| 法人向け | 業務の課題と導入の効果が言える | 営業とサポートに割ける時間 |
表は左右にスクロールできます。
私は無料+サブスクにした。買い切りを選ばなかった理由
公開しているアプリは、いずれも無料で使える範囲があり、その先がサブスクという形です。買い切りにしたものはありません。
理由は費用の続き方です。どのアプリも、公開したあとに手が離れません。OSが上がれば作り直すところが出ますし、外部のサービスの仕様も変わります。買い切りは、払ってもらったあとの保守を別のところから持ってくることになります。一人でやっていると、その別のところがありません。
もう一つは、直せる余地を残したかったことです。サブスクなら、価値が足りなければ解約されます。厳しい仕組みですが、足りていないことが数字で返ってくるという意味では買い切りより分かりやすかったです。
段の数については、一本だけ三段階にして、他は一段階にしています。三段階のほうは、どの段で何ができるかを説明する場所が三か所に増えました。ストアの説明、アプリの中の料金画面、サイトのページ。段を増やすと、実装よりも説明の同期が重くなります。これは作る前には見えていませんでした。
⚠️ どちらが儲かるかは書きません。比べられるだけの期間も利用者数もまだありません。書けるのは、説明を保つ手間が段の数に比例したという一点だけです。
サブスクにして分かったのは、料金画面が仕様書のように働くことでした。何ができて何ができないかを一覧にすると、決めていなかった境界がその場で出てきます。無料でどこまで保存できるのか、解約したあとに残るのか。作る前に書くほうが早いです。
広告を入れていない理由。外へ出るデータを追えない
広告は、いまのところどのアプリにも入れていません。体験への割り込みも理由ですが、決め手は別です。自分が入れた部品が何を外へ送るかを、最後まで把握できる自信がなかったからです。
これは実際に一度経験しました。地図の部品を入れたら、こちらのコードには一行も書いていないのに、既定で位置情報を分析目的へ送る設定になっていました。画面を見ても分かりません。部品側の申告を読んで初めて気づきました。
広告の仕組みは、データを集めることで成り立っています。同じ種類の見落としが起きたときの影響は、地図の部品より大きくなります。プライバシーの申告はこちらの名前で出すので、中身を説明できないものを申告に書けないという判断になりました。
この線引きは、広告が悪いという話ではありません。把握できる範囲が広い人なら成り立ちます。私の場合、確かめ方を持っていない領域だったので外しました。同じ考え方で申告を読む手順はアプリのプライバシーポリシーはどこを見る?探す五つの項目に書いています。
広告を外した代わりに背負ったものもあります。無料の利用者からは何も入りません。その前提で、無料の範囲をどこまで開けるかを決めることになりました。
無料と有料の境界。中心の価値は一度は届ける
境界の決め方は一つだけ決めています。中心の価値を、払う前に一度は体験できるようにすることです。
逆をやると、何が便利になるか分からないまま料金画面が出ます。そこで払う人は、すでにそのアプリを知っている人だけです。最初の利用者がいない段階では、ほぼ誰も払いません。
下の四つの手順のうち、後回しにしがちなのは四番目です。作っているときは、解約する人のことを考えたくありません。ただ、ここを決めずに進めると、データを消すのか残すのかが実装の途中で問題になります。順番としては、料金画面と同じ時期に決めるのがよかったです。
01 中心の価値を、払う前に一度は届ける
何が便利になるか分かるところまでは無料で通します。回数や保存数で区切るのはこのあとです。
02 有料になると何が増えるかを一文にする
回数、保存、時間の短縮、履歴の振り返り。一文で書けないものは、有料の理由として弱いと考えています。
03 続く費用を、作業時間まで含めて数える
外部サービスの利用料、サーバー、ストアの手数料、問い合わせ、そして自分の作業時間を入れます。
04 解約したあとに何が残るかを決める
解約後に何が残り、何が使えなくなるかを先に決めます。ここを決めずに出すと、審査でも聞かれます。
公開後に見る段階。購入率より前に見るもの
公開したあとは、ダウンロード数だけを見ないようにしています。見るのは段階です。アプリを開いた人、中心の機能を使った人、有料の画面を見た人、払った人、続けた人。
段階に分けておくと、直す場所が一つに決まります。中心の機能を使う人が少ないなら、料金の設計を変えても意味がありません。有料の画面まで来ているのに払われないなら、そこの説明の問題です。
私はこれを、収益化ではないアプリで学びました。返信を考えるアプリを公開して、九日のあいだ利用者が一人も来ませんでした。購入率を上げる話ではなく、最初の段階に人が来ていないという状態でした。そのときやったのは価格の見直しではなく、同じ分野のアプリを百本以上並べて、探されている言葉を確かめる作業です。
⚠️ 利用者が少ない段階では、一人の行動を結論にしないことも決めています。一人が離脱した理由は、その一人の理由です。段階で見ていれば、数が少なくても「どこが細いか」は分かります。
段階を見る仕組みは、公開のあとに足そうとすると間に合いません。最初の利用者が来るのは、たいてい公開した直後です。何も測っていないと、その数人がどこで止まったかが分からないまま過ぎます。
公開までの全体の流れは個人でアプリを作るには?企画から公開までの七段階と止まる場所、機能の絞り方はMVPとは?最初のアプリで機能を絞る方法と、外れたときの扱いに分けました。
- アプリを開いた人が、中心の機能まで届いているか。
- 有料の画面を見た人がいるか。ゼロなら価格の話ではない。
- 解約した人が、いつ解約したか(初月か、何か月か後か)。
- 続く費用が、いまの利用者数でも払える範囲にあるか。
- ストアの説明・料金画面・サイトの記述が食い違っていないか。
よくある疑問と、この記事で書いていないこと
個人開発のアプリは、広告とサブスクのどちらがいいですか?
続く費用があるかで決まります。サーバーや外部サービスの利用料が毎月かかるならサブスクが噛み合います。私は広告を選びませんでしたが、理由は儲けではなく、入れた部品が何を外へ送るかを説明できないと申告に書けないからです。
買い切りにしてはいけませんか?
価値が購入の時点で完結するなら成り立ちます。避けたほうがよいのは、買い切りなのに毎月の費用が続く形です。払ってもらったあとの保守を別のところから持ってくることになります。
無料の範囲はどこまで開けるべきですか?
中心の価値を一度は体験できるところまでです。回数や保存数で区切るのはそのあとにしています。何が便利になるか分からないまま料金画面が出ると、そのアプリを既に知っている人しか払いません。
料金の段階は何段にすればいいですか?
少ないほうが保ちやすいです。私は一本だけ三段階にしていますが、どの段で何ができるかを書く場所が三か所に増えました。ストアの説明、アプリ内の料金画面、サイトのページ。実装より説明の同期が重くなります。
サブスクにしたのに解約されます。何を直せばいいですか?
解約の時期で見方が変わります。初月で解約されるなら、料金画面の説明と実際の体験がずれています。何か月か使ってからなら、毎月の価値が続いていないということです。前者は文言、後者は機能の問題です。
利用者がまだ少ないうちに収益化を考えるべきですか?
段階で見て、有料の画面まで人が来ているかを先に確かめます。ゼロなら価格の話ではありません。私は九日間利用者が一人も来なかったアプリで、価格ではなく探されている言葉から見直しました。
解約したあとの画面は必要ですか?
必要です。解約後に何が残り、何が使えなくなるかを決めておかないと、実装で詰まります。審査でも聞かれる場所なので、料金画面と同時に作るようにしています。
この記事では、金額と収益の数字を書いていません。公開してからの期間が短く、比べられる材料を持っていないからです。いくらにすればよいかを知りたい場合、ここに答えはありません。
同じ理由で、モデルごとの収益の比較も書いていません。私は無料+サブスクの形しか出していないので、買い切りや広告と並べて語れる立場ではありません。書けたのは、選ぶ前に何が決まってしまうかという部分だけです。
書いていないことをもう一つ。有料プランを作っていないアプリも一本あります。先に中心の機能が使われるかどうかを見たかったので、課金の仕組みそのものを後ろに置きました。収益化を最初から入れないという選択肢も、実際にはあります。



