競合調査をAIに頼むと、それらしい比較表がすぐ出てきます。速いのですが、書かれている中身が本当かは別の話です。丸とバツが並んでいると確かめた事実に見えますが、書かれているのは学習した時点の情報で、価格も機能も変わります。私は一度、調査の結果と実物が食い違ったまま進めて、あとから作り直しました。裏の取り方を含めた手順と、機能ではなく名前で埋もれる場合、そして「似ている」と言われる側になったときの話までまとめます。
出てきた比較表を、そのまま信じてはいけない
「競合を5つ挙げて比較して」と頼むと、表が返ってきます。機能の丸とバツが並んでいて、読むと分かった気になります。
ただ、そこに書かれているのは学習した時点の情報です。価格は変わりますし、機能は増えますし、サービスごと終わっていることもあります。丸バツの形をしているぶん、確かめた事実のように見えるのが厄介でした。
いまは最初の依頼に「各項目について、どこで確認できるかのURLを添えてください」と必ず入れます。URLが出せない項目は、その時点で保留にします。
実際にやってみると、URLを求めた瞬間に埋まらない欄がかなり出ます。埋まらないことが分かるのが収穫で、空欄のある表のほうが、全部埋まった表より正確でした。
URLを添えさせるもう一つの効用は、調べた日が残ることです。半年前の調査を今の判断に使ってしまう事故は、これで減りました。価格や提供状況は数か月で変わるので、表そのものより日付のほうが大事になる場面があります。
手順:広げるのは任せて、確かめるのは自分で
01 何を競合と見るかの軸を渡す
「競合を挙げて」だけだと、有名なものが並びます。「同じ悩みを別のやり方で解決しているものも含めて」と足すと、範囲が変わります。アプリだけでなく、紙のノートや既存の機能で済ませている場合も競合です。
02 精度より数。多めに出させる
この段階では精度より数です。絞るのは自分でやるので、20個ほど挙げさせて構いません。ここはAIが速い作業です。
03 確かめる項目を五つに絞り込む
全部を調べると終わりません。対象の利用者、解決している場面、料金の形、最終更新日、レビューで繰り返される不満。この5つに絞ると、比較として意味が出ます。
04 一次情報を自分で開いて埋める
ここは自分で開きます。公式サイト、ストアのページ、レビュー。AIには「どこを見るか」を出させて、見るのは自分、という分担にしています。
05 自分の位置を一文で書いてみる
表を作って終わりにしません。「誰のどんな場面で、どこが違うか」を一文にします。書けないなら、まだ差がないということです。
数で見ると印象が変わる。118本を調べた話
返信文を作るアプリを公開したとき、9日間で利用者が0人でした。感覚では「使われるはず」と思っていたので、そこで同じ領域のアプリを118本調べました。
調べてみると、想定していた差が差になっていませんでした。同じことを謳っているものが多く、選ぶ理由として弱かった。そのまま機能を足しても順番は変わらないと分かったので、何を中心に置くかから見直しました。この経緯は公開9日で利用者0人。118本を調べて、返信AIが選ばれにくい理由を見直したに書いています。
数を当たる作業はAIに任せられます。ただ、何をもって「差がない」と判断するかは、こちらが決めるしかありません。ここを渡すと、それらしい結論が返ってきて、納得して終わります。
ひとつ言えるのは、公開後の調査のほうが精度が高いということです。作る前の調査には想像が混じりますが、公開後には利用者0人という動かせない事実が付きます。手遅れに見えて、実際には一番効く材料が手に入るタイミングでした。
もう一つ、調べる前に「どうなっていたら差がある」と言えるかを決めておくと結論がぶれません。決めずに調べると、出てきた結果に合わせて基準のほうが動きます。私はここを決めずに調べて、納得だけして終わったことがあります。
機能ではなく名前で埋もれる。似ていると言われる側
機能ではなく、名前で埋もれる場合があります。これは見落としやすい。
私は自分の屋号で検索して確かめました。同じ名前の企業や製品が8件ほど出てきて、そのどれもが自分より長く存在しています。光学機器の会社、大手のジュエリーのライン、別の開発者が出している同名のアプリ。言語を限定しない検索結果の1ページ目には、自分のサイトは入りませんでした。
この調査自体はAIに任せられます。検索結果を読ませて、同名の主体を並べさせればよい。ただし実際に検索して自分の目で見るのは必要でした。結果は人や地域で変わるので、代わりに見てもらった画面と、自分の画面が同じとはかぎりません。実際、言語を日本語に絞ると順位がまったく違いました。どちらが本当かではなく、どちらも本当です。
検索結果に出ないことは、機能では取り返せません。どれだけ中身が良くても、名前で辿り着けなければ会えないからです。名前を決める段階でこれをやる方法はAIでアプリ名を考えるときの質問例と、埋もれない絞り込み方にまとめました。
競合調査は、こちらが調べるだけの話ではありません。審査する側から「似たものはもう十分ある」と言われることがあります。
実際に、位置情報を使うアプリで既存の類似アプリが多いことを理由に却下されたことがあります。機能を削ったり説明を書き換えたりしても通らず、最終的にはアプリの主語そのものを変えました。人を探すのではなく、近所の予定を探す形にした。
このとき効いたのは、機能の比較表ではありませんでした。「誰の、どんな場面か」がずれていることを示せて初めて別物になります。だから調査でも、機能の丸バツより場面を優先して集めるようになりました。
調べる項目そのものの一覧は作りたいアプリに競合がいたら?調べる七項目と比べていく順番にまとめています。この記事は、それをAIに手伝わせるときの話です。
この2つは、機能の比較表からは出てきません。名前で検索した結果と、審査で何を言われたかという、表の外にある材料からしか分かりませんでした。
AIに任せる部分と、自分でやる部分。頼み方の例
この表の上半分だけを渡すと速くなります。下半分まで渡すと、納得はできても判断はしていない状態になります。
「未確認と書いてください」の一文が効きます。これが無いと、埋まっていない欄が推測で埋まり、表としては完成して見えるからです。
分担を決めておくと、途中で止められます。候補を広げるところまで任せて、開いて確かめる前に一度見る。表が完成してから疑うより、埋まる前に見るほうが軽いです。
弱い頼み方
このアプリの競合を5つ挙げて比較してください。
強い頼み方
同じ悩みを解決しているものを、別のやり方のものも含めて20個挙げてください。各項目について、対象の利用者、解決している場面、料金の形、最終更新日、レビューで繰り返される不満を、確認できるURLつきで書いてください。URLが示せない項目は「未確認」と書き、推測で埋めないでください。
| 作業 | 担当 | 理由 |
|---|---|---|
| 候補を広く挙げる | AI | 数を出す作業。漏れを減らせる |
| どこを見れば分かるかを示す | AI | 探し方は外にある情報 |
| 公式サイトとストアを開く | 自分 | 価格と提供状況は今の値でないと意味がない |
| レビューを読む | 自分 | 繰り返される不満は量より質で読む |
| 差があるかを判断する | 自分 | 基準が頭の中にしかない |
| 作るかどうかを決める | 自分 | 調査では決まらない |
表は左右にスクロールできます。
よくある疑問と、調査だけでは決まらないこと
- 価格と提供状況は、必ず自分で開いて確かめる。
- 最終更新日を見る。止まっているものは競合ではない。
- レビューは星の数より、繰り返されている不満を読む。
- 自分に都合のよい結論が出たときほど、出どころを開く。
- 調べた日を残す。数か月で変わる。
AIが出した比較表はそのまま使えますか?
使えません。書かれているのは学習した時点の情報で、価格も機能も提供状況も変わります。最初の依頼に「各項目について、どこで確認できるかのURLを添えてください」を入れてください。URLを求めた瞬間に埋まらない欄がかなり出ます。
空欄のある表は不完全ではないですか?
逆です。空欄のある表のほうが、全部埋まった表より正確でした。「未確認と書いてください。推測で埋めないでください」を添えないと、埋まっていない欄が推測で埋まり、表としては完成して見えます。
競合はいくつ調べればいいですか?
候補は20個ほど出させて、確かめる項目を5つに絞っています。対象の利用者、解決している場面、料金の形、最終更新日、レビューで繰り返される不満。全部を調べようとすると終わりません。
レビューはどう読めばいいですか?
低評価だけを読むと、その領域が全部だめに見えます。高評価の中で何が褒められているかを見るほうが、こちらが用意すべき水準が分かりました。星の数より、繰り返されている不満のほうを読みます。
作る前と公開後、どちらで調べるべきですか?
両方やりますが、公開後の調査のほうが精度は高いです。作る前の調査には想像が混じりますが、公開後には利用者数という動かせない事実が付きます。手遅れに見えて、実際には一番効く材料が手に入るタイミングでした。
競合が多かったら作るのをやめるべきですか?
調査では決まりません。私が作っている2つのアプリは、どちらも競合が多い領域です。続けているのは、自分が使いたい形が既存の中に無かったからです。調査は判断を助けますが、代わりにはなりません。
最後の項目は地味ですが効きます。半年前の調査を今の判断に使ってしまう事故が、これで減りました。
レビューの読み方にも癖をつけています。低評価だけを読むと、その領域が全部だめに見えます。高評価の中で何が褒められているかを見るほうが、こちらが用意すべき水準が分かりました。
全部調べても、作るかどうかは決まりません。競合が多いからやめる、少ないからやる、という話ではないからです。
実際、返信文のアプリも位置情報のアプリも、競合は多い領域でした。それでも続けているのは、自分が使いたい形が既存の中に無かったからです。調査はその判断を助けますが、代わりにはなりません。
材料を集めることと、決めることを分ける。AIに任せられるのは前者だけだと、毎回自分に言い聞かせています。
それでも調査をやる理由は、負ける形を先に知るためです。同じことを言っているだけなら選ばれない、名前で埋もれるなら会えない、場面がずれていなければ審査で止まる。この3つは、作ったあとに知ると高くつきました。



