新しい技術から考えるより、毎週繰り返している手間や、何度も迷う場面を集めるほうが具体的な案になります。アイデアは思いつくものではなく、気づいて書き留めるものでした。まず不便、使う人、起きる場面、今の代替手段を一組にします。この記事では、一週間の記録のとり方、一文に変える手順、アプリに限定しないで考える理由、そして案を捨てる判断まで並べます。捨てた案をどう残しておくかについても、最後にあわせて書きます。
一週間、不便だけを記録する。解決策は書かない
アイデアが出ないとき、考える時間を増やしても出てきません。材料が無いからです。まず1週間、困った場面だけを書き留めます。
⚠️ このとき、解決策は書かないでください。「こうすれば直る」まで書くと、そこで案が1つに固定されます。困った事実だけを残しておくと、あとから複数の見方ができます。
書き留める対象は、次のような場面です。どれも繰り返し起きていることが共通しています。一度きりの不便は、解決しても効果が小さい。
1週間という長さにも理由があります。その週だけの事情を平均できるからです。1日だと忙しさに引きずられますし、1か月だと記録が続きません。
記録した不便を見返すときは、同じことが何回出てきたかを数えるのが早いです。3回以上出ているものが、たいてい候補になります。1回だけのものは、そのとき強く感じただけかもしれません。
- 同じ内容を何度も入力した。
- 必要な情報を毎回探した。
- 選択肢が多くて決められなかった。
- 誰かへ状況を説明し直した。
- 忘れて買い直した、やり直した。
- 複数のアプリを行き来した。
アイデアを一文に変える。三つを入れて書く
一文にする理由は、あとで判断の基準に使うためです。機能を足すか削るかを迷ったとき、この一文に照らして決められます。
⚠️ 一文で書けないものは、まだアイデアになっていません。長く説明しないと伝わらない案は、自分の中でも整理できていないことが多いです。
私は、ここを曖昧にしたまま作って審査で「似たアプリはもう十分ある」と言われたことがあります。一文が書けていないことは、外から見ても分かります。経緯はApp Storeに「似たアプリはもう十分ある」と言われて、アプリの主語を変えたに書きました。
一文の型を1つ挙げておくと、「◯◯な人が、◯◯する場面で、◯◯しなくて済む」です。3つの空欄が埋まらないなら、埋まらない場所がそのまま足りていない材料です。
一文が書けたら、しばらく寝かせるのも効きます。翌日に読み返して、まだ作りたいと思えるかどうか。前日に良いと思ったものが、翌日には弱く見えることがあります。
01 使う人を置く。対象を狭く取る
自分、家族、特定の仕事をする人など、最初の対象を狭くします。広く書くほど当たりそうに見えますが、判断の基準としては弱くなります。
02 場面を置く。いつ・どこで困るか
いつ、どこで、何をしようとして困るのかを書きます。場面が無いと、機能の話になります。「便利にする」ではなく「この瞬間に困っている」を書きます。
03 変化を書く。使った後の違い
何分減る、迷わず決められる、忘れにくくなるなど、利用後の違いを書きます。ここが書けないなら、まだ解決したいことが定まっていません。
解決策をアプリに限定しない。作らない判断も残す
メモや既存サービスで十分なら、新しいアプリを作る必要はないかもしれません。その確認で案が消えることは失敗ではなく、開発時間を使う前に判断できたということです。
既存の方法があるのに使われていない場合は、機能不足ではなく、入力が面倒、料金が合わない、対象が違うなど別の理由を探します。ここを見ずに機能で勝とうとすると、同じことをもう一度作ることになります。
⚠️ 「自分が使っていない既存サービス」を理由なく否定しないようにしています。使っていないなら、良し悪しを判断する材料がありません。まず使ってみて、何が合わなかったかを書くほうが具体的です。
代替手段を調べたうえで、それでも作る理由が残るなら進めます。私が続けている2つのアプリも、競合が多い領域です。それでも作ったのは、自分が使いたい形が既存の中に無かったからでした。
既存のものを使ってみるときは、自分が困っていた場面で使うのが確実です。機能一覧を眺めても、合うかどうかは分かりません。実際にその場面で開いてみて、面倒だと感じたところが作る理由になります。
「作らない」と決めた案も、記録は残しておきます。そのとき既存で足りていただけで、状況が変わることがあるからです。
案を捨てる判断と、捨てた案の残し方について
集めた不便のすべてがアプリになるわけではありません。捨てる作業のほうが多いと思っておくと楽です。
捨てる基準を3つ使っています。繰り返し起きていない、自分が使わない、代替で足りている。どれか一つでも当てはまるなら、いまは作りません。
「繰り返し起きていない」は見落としやすいところです。強く困った記憶があると大きな問題に見えますが、年に1回なら解決しても効果は小さいです。記録を1週間とるのは、頻度を見るためでもあります。
「自分が使わない」も大事です。⚠️ 自分が使わないものを作り続けるのは、一人だとかなり難しい。反応が無い時期に、続ける理由が残りません。
捨てた案は、理由を添えて残します。消してしまうと、同じ案をまた思いついたときに、なぜ捨てたのか分かりません。私は企画の台帳に、書けない理由を書いた行をそのまま残しています。「使っていないので書けない」といった内容です。
前提が変わったときに、残した理由のほうが先に古くなることもあります。そのときは復活させればよく、判断をやり直せる形にしておくのが目的です。
捨てた案を残すもう一つの効用は、同じ判断を繰り返さないことです。似た案を思いつくたびにゼロから考えるのは時間の無駄でした。
捨てる基準のうち、「自分が使わない」を最後まで守るのが一番難しいところです。市場が大きそうに見える案ほど、自分が使わなくても作りたくなります。ただ、反応が来ない時期に続ける理由は、結局そこにしかありませんでした。
候補が出たら競合を調べる。似ていることは問題ではない
似たアプリがあることは、需要がない証拠ではありません。むしろ、誰かが作るだけの理由があったということです。
見るのは、既存アプリの対象、利用場面、レビューです。そのうえで、自分の案が何を変えるのかを確認します。機能の丸バツより、誰のどんな場面かがずれているかを見るほうが判断に使えます。
ここで差が見つからないなら、そのまま作っても選ばれにくいです。私は返信アプリを公開して9日間で利用者が0人でした。そのあと同じ領域を118本調べて、想定していた差が差になっていなかったと分かっています。公開9日で利用者0人。118本を調べて、返信AIが選ばれにくい理由を見直したに書きました。
調べる項目は作りたいアプリに競合がいたら?調べる七項目と比べていく順番へ、AIに手伝わせる場合はAIを使った競合調査の進め方|裏の取り方と、任せない判断へ進んでください。
案が固まったら、機能を絞る段階です。MVPとは?最初のアプリで機能を絞る方法と、外れたときの扱いに、最初に確かめる仮説の決め方を書いています。
競合を見る時期は、案が固まる前がよいです。固まってから調べると、都合の悪い結果を見なかったことにしたくなります。私はそこで一度、判断を遅らせました。
よくある疑問と、アイデアが出ないときの考え方
アプリのアイデアが思いつきません。
考える時間を増やしても出てきません。材料が無いからです。1週間、困った場面だけを書き留めてください。⚠️ このとき解決策は書かないこと。「こうすれば直る」まで書くと、そこで案が1つに固定されます。
どんな不便を記録すればいいですか?
繰り返し起きていることです。同じ内容を何度も入力した、必要な情報を毎回探した、誰かへ状況を説明し直した。一度きりの不便は、解決しても効果が小さいです。
似たアプリがあったら諦めるべきですか?
需要がない証拠ではありません。誰かが作るだけの理由があったということです。ただし、対象と場面がずれていないなら、作っても選ばれにくいです。私は差があると思って出して、9日間で利用者0人でした。
アイデアが多すぎて選べません。
繰り返し起きているか、自分が使うか、代替で足りていないかの3つで削ってください。どれか一つでも欠けるなら、いまは作りません。捨てる作業のほうが多いと思っておくと楽です。
既存サービスで足りる場合はどうしますか?
作らない判断ができたということです。開発時間を使う前に分かったので、失敗ではありません。既存があるのに使われていないなら、機能不足ではなく入力の面倒さや料金や対象の違いを疑ってください。
捨てた案はどうすればいいですか?
理由を添えて残してください。消すと、同じ案をまた思いついたときに、なぜ捨てたのか分かりません。前提が変わって復活することもあるので、判断をやり直せる形にしておきます。
自分が使わないアプリを作ってもいいですか?
⚠️ 一人だとかなり難しいと思います。反応が無い時期に、続ける理由が残らないからです。市場が大きそうに見える案ほど作りたくなりますが、使わないものを改善し続けるのは、判断の材料も足りません。
技術から考えるのはだめですか?
だめではありませんが、作る価値が曖昧だと機能が増え続けます。新しい技術を試したいという動機で始めるなら、それを目的だと自覚しておくと判断がぶれません。利用者を増やす目的と混ぜると、どちらも中途半端になります。
⚠️ この記事は、売れるアイデアの見つけ方を扱っていません。私自身がまだ確かめられていないためです。扱っているのは、案を集めて判断できる形にするところまでです。
また、収益化の方法も別の話です。無料アプリはどう収益化する?広告・買い切り・サブスクの選び方に分けて書きました。
覚えておくと使えるのは、解決策を先に書かないという1点です。困った事実だけを残しておくと、あとから複数の見方ができます。最初に思いついた解決策が最善とは限りません。
材料が集まっていれば、案は自然に出てきます。出ないのは、材料を集めていない期間が続いているだけのことが多いと思います。



